top of page

ヒーロー犬



私が5歳くらいの時、祖父母宅にテルという名の雑種犬がいました。中型犬でしたが当時の私にとってはとても大きく怖いものに感じ、祖父に「テル」と呼ばれて嬉しそうにかけよるのを遠くから眺めるだけでした。


ある日、祖父からテルを散歩に連れて行くように頼まれました。テルが怖い私は祖母に助けを求めましたが、祖母は「テルは優しいから大丈夫!行ってきなさい」と言ったのです。祖父からリード(当時は綱でした)を手渡され、私は涙目でゆっくり歩き始めました。私の不安な気持ちをよそに、テルは嬉しそうに大きな尻尾を振りながら私の歩調に合わせ歩きます。しばらく歩いて行くと突然テルが立ち止りました。テルを見ると一点を見つめています。同じ方向に目を向けると、草むらから真っ白でテルよりも一回り大きな犬が「ウッー」と唸りながら私に向かって走ってきました。あまりの怖さに手に持っていたリードを放した瞬間、テルが白い犬に向かって走って行き、今まで見たことがない表情で吠え追い払ってくれました。そしてテルは何事もなかったかのように、尻尾を大きく振りながら戻り私の甲をペロペロ舐めた後、祖父宅まで連れ帰ってくれたのです。


その出来事から私にとってヒーロー犬となり、テルとの散歩も楽しい時間になりました。

祖父母たちが田植えやお茶摘みなどで忙しくしているときもテルがいれば安心しでした。

本当にテルと一緒にいることが幸せな時間でした。

今はもう会うこともできませんが、何年たってもテルの事は忘れることはありません。


#テル#散歩#楽しい時間

bottom of page